ゆっくんが、独りでハンモックに座っていた。

その背中が寂しそうで、氣になったので、近づくと、
ゆっくんは、盛り上がった涙がこぼれないように、前を向いていた。


「何か、悲しいことがあった?」

と聞くと、わずかに頷く。

視線の先には、楽しそうに遊ぶ、いっくん、あーくん、やっくんがいた。


「みんなが思っている事と、ゆっくんが思っていることが違った?」
と、聞くと、またかすかに頷く。


「話をしたいことがあるなら、一緒に行こうか?」
と、聞くとまた無言で頷き、立ち上がる。


ゆっくんが来たのを察してか、
「おもしろい話、向こうでしようぜ。」
と、その場を離れかけた3人に、

「ゆっくんが、ちょっと話をしたいんだって、聞いてくれる?」と言うと、


しばらく考えて、
「わかった、話をするなら、降りるよ。
 ゆっくんが下にいるんだし、俺らだけ木の上じゃ、ダメだろ。」
と、いっくんが木から降りてくる。


ゆっくんの前に3人とも座ったけれど、ゆっくんから言葉は出ない。

途中、バッタが横切ったり、アリを見つけたり・・・
その度にゆっくんは手を動かしたり、目線を動かしたりするけれど、言葉はない。


やっくんがヤマモモを拾ってきて、他の2人に渡すと、
「ゆっくんの分がないなら、俺は食べないで持っておくわ。」と、いっくん。

その言葉にハッとしたやっくんは、自分の分を、ゆっくんに握らせる。


「な~、何も話がないなら、俺ら、もう、遊びたいんだけど。」
「座ってるのも、疲れてきちゃったよ。」


しばらくとどまっていた3人は、立ち上がって向こうに歩きだす。


ゆっくんは、あじめに背を向けて、ヤマモモを口に入れる。


どうにもこうにも言葉にならない、このもどかしさ。
たっぷりな時間があってよかった。
ヤマモモが豊作でよかった。


一緒に遊びたい氣持ちと、遊びたくない氣持ち。
どちらも、本物。
”今、ここ”の正直な氣持ち。

DSCN7922

DSCN7934

DSCN7933

DSCN7940